Mr.Children「シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
片想いの恋心についてちょっとぶっきらぼうな感じに書き上げている歌詞が特徴的です。
恋心というのはとても真っ直ぐな感情なので、それがいい結果に結びつかないとどうしてももやもやしたり傷ついたりしてしまうもの。これはこの歌詞の主人公にとっても同じです。
もやもやした感情から、恋というのはエゴとエゴを出し合うシーソーゲームだというものすごく的確な表現も生み出してしまっています。
それでも、恋に落ちるということは避けられない。つらいことも多いのに“君”に恋に落ちてしまった。その状態をどこか客観的に捉えた表現も多いです。
どこか他人事のようで、素直に自分の恋心を認めたくないようなことを言っておきながら、それでも勇敢にこの恋に向き合っていきたいという本音が書かれています。この矛盾したような気持ちを書き表すことが、恋心の複雑さを的確に表現していると感じます。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
愛想なしの君が笑った そんな単純な事で
遂に肝心な物が何かって気付く
<出典>シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―/Mr.Children 作詞:桜井和寿
普段は愛想がない“君”が、ふとした瞬間に笑った。その瞬間に主人公の心のなかで大きく動いたものがあった。それが「肝心な物」です。
それはつまり、「“君”に恋している」と自覚したということに他なりません。普段からのギャップにやられてしまったという典型的な恋に落ちるパターンです。
ねぇ 等身大の愛情で挑んでるのに
世間は暗い話題
<出典>シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―/Mr.Children 作詞:桜井和寿
等身大の愛情とは、自分から出せる愛情は全部出し切っているよということ。全力で“君”に恋しているということですね。
そんな全力の愛にもかかわらず、その恋はうまく実りません。世間の暗い話題を引き合いに出して、「自分の恋がうまく行かないのも世の中の暗い話題のせいだ」なんて自分に言い聞かせている心境が想像できる1フレーズです。
恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲーム
いつだって君は曖昧なリアクションさ
<出典>シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―/Mr.Children 作詞:桜井和寿
全体解釈のところでも書きましたが、この「エゴとエゴのシーソーゲーム」の表現はなんとも言い得て妙な名言だと思います。
お互いの気持ち(エゴ)を出し合って、自分の方に傾いたかと思いきや、今度は相手の方に傾いたり。その繰り返しややり取りのなかで恋というのは常に様相を変えながら存在しています。
“君”が曖昧なリアクションなのは、このシーソーゲームのやり取りで主人公が自分のエゴを出したタイミングだからでしょう。主人公のエゴとは、言うまでもなく「“君”が好き」という気持ち。ストレートに言葉で告白したのではなく、デートに誘ったくらいの出し方ではないかと想像できます。
その結果が曖昧なリアクションだったということです。切ないところですよね。
何遍も恋の辛さを味わったって
不思議なくらい人はまた恋に落ちてゆく
運命のいたずらってやつも考慮して
照準を絞ってステップアップしたい そう祈って眠るだけ
<出典>シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―/Mr.Children 作詞:桜井和寿
恋は落ちるものとはよく言いますが、この主人公もまさしく恋に落ちた状態にあります。
過去の恋では、手痛い記憶もいくつかあるようですが、そんなことは関係なく恋心というのは芽生えてしまうもの。それがとても不思議だと感じているのです。
今回の恋こそは、運命のいたずらがあって一筋縄ではいかないとあらかじめ計算したうえで、狙いを定めて“君”への距離を詰めて登っていきたい。という主人公の思い(これもまさにエゴですよね)が書かれています。
アダムとイブの時代から 流れくる我らの血潮
愛の神秘に魅せられて 迷い込む恋のラビリンス
<出典>シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―/Mr.Children 作詞:桜井和寿
どうしてこうも人は恋や愛を求める体質なのか。その答えを考えているのがこの部分。
最初の人間、アダムとイブは互いに惹かれ合って人間を繁栄させていきましたが、このときから人は恋や愛を求めるものと決まっているという壮大な考えです。
愛想が尽きるような時ほど She So Cute
お望み通り Up Side Down
勇敢な戦士みたいに愛したいな
<出典>シーソーゲーム ―勇敢な恋の歌―/Mr.Children 作詞:桜井和寿
何度アプローチしてもリアクションの薄い“君”。そんな“君”に対して愛想が尽きてしまいそうな(諦めたい気持ちになりそうな)ときほど、彼女のことが魅力的に感じてしまう。
こんなことって確かにありますよね。諦めようとしても、そんなときに限って笑顔を見せられてしまったりしたら一気にまたラビリンスに逆戻りしてしまいます。
「Up Side Down」は「逆さま」という意味。真っ逆さまにまた恋に落ちていくいう意味ですね。
でも、何度彼女の気持ちに阻まれても、そのたびに痛くてつらい思いをしても、勇敢な戦士のように愛していきたいという気持ちでいる主人公なのです。
確かに、傷つくことを恐れたら恋は成し遂げられませんもんね。
学びの一言
恋には落ちてしまう。そこではエゴとエゴをぶつけ合うことになる。そして傷つく。でも恋には落ちてしまう。ならば勇敢に向き合っていこう。
歌詞全体を並べたような形になってしまいました。でも、つまりこういうことだと思います。アダムとイブからの遺伝なんですもの、恋に落ちることから逃げることは僕たちにはできないのかもしれません。
それでも、相手にも都合(エゴ)がありますから、その恋がうまく実るかはわかりません。うまく行かなければものすごくダメージを受けますよね。僕にもがっつり、しかも何度も経験があります。
それでも怯まずに、自分が落ちてしまった恋に向き合うことが、愛を求める宿命にある僕たちのすべきことなのかな。なんて、この歌詞を聞くと勇気を分けてもらえます。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
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