Mr.Children「渇いたkiss」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
もう手遅れの別れの気配…。その独t区の空気管とそれに対する心境を書いた歌詞です。
別れの原因は、彼女の心変わりなのでしょうね。主人公もそれに気づいていることが歌詞を見ていると読み取れます。
男としては何とも自分が情けなくなるシチュエーション。崩れた自尊心を補おうと、何もなかった顔で、心の中では自分がいなくなることで彼女がダメージを負うことを強く期待しています。
こう書くと陰湿な男のように映りますが、誰しも恋人から別れを切り出されてしまったら似たようなことを少しは考えてしまわないですか?…少なくとも僕は似た経験があります。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
君が最後の答えを口にしてしまう前に
渇いたキスで塞いでしまう
それでなんとか今をしのげればいいのに
<出典>渇いたkiss/Mr.Children 作詞:桜井和寿
最後の答えというのは、言わずもがな、別れを切り出す一言です。
「渇いたkiss」という曲のタイトルにもなっているこの表現。意味は、「愛情の感じられないキス」で間違いないと思いますが、すごい表し方ですよね。桜井さんの感性を感じます。
彼女からの愛情は感じられなくても、キスをしたという形だけでも取ることで、彼女の口から最後の答えが出てしまうのを封じることができないか…。主人公はそう思っているのです。
いつからか君は取り繕い
不覚にも僕は嘘を見破り
よくあるフォーマットの上
片一方の踵で乗り上げてしまうんだ
<出典>渇いたkiss/Mr.Children 作詞:桜井和寿
彼女が取り繕っている、そして嘘という言葉から、彼女は主人公ではない他の誰かに心が移っているのだと読み取れます。“不覚にも”と言っているあたり、主人公はそんなこと気づきたくなかったと思っているのが伝わってきてツラいです。
“フォーマット”という言葉には、「仕様」とか「型」という意味をあてればいいと思います。「彼女が心変わりして、僕は捨てられて2人はおしまい」そんな、“よくある”別れの型に、もう片足を突っ込んでしまっているんだ。と、主人公は察している状態です。
誰かが禁断の実摘み取り
再び次の果実が実る
<出典>渇いたkiss/Mr.Children 作詞:桜井和寿
禁断の実とは、彼女の主人公への愛情のこと。それを誰か他の男が勝手に摘み取ってしまい、そこには新しい果実が実る。
その新しい果実とは、心変わりした別の男への愛情のことを指します。
全体的に暗いトーンのイメージの歌詞ですが、僕はこのフレーズだけ、鮮やかな赤い果実をイメージしてしまいます。
ある日君が眠りに就く時
僕の言葉を思い出せばいい
そして自分を責めて 途方に暮れて
切ない夢を見ればいい
<出典>渇いたkiss/Mr.Children 作詞:桜井和寿
全体の解釈のところで、主人公は「自分がいなくなることで彼女がダメージを負うことを期待している」と書きましたが、それが読み取れるのがここ。
僕の言葉というのがどんな言葉なのかは不明ですが、とにかく自分のことを思い出し、別れたことを後悔して、寝るときには切ない夢を見るがいい。というふうに考えているのです。
まあ、こう考えちゃいますよね。だって、真逆だったら自分の存在はなんだったんだってなります。
自分との会話なんてひとつも思い出さないで、毎日スッキリいい気分。寝るときは新しい彼の夢を見て…。なんて想像したら立ち直れなくなってしまいそうです。
総ての想いを断ち切ろうとする度
まとわりつくような胸の痛み
<出典>渇いたkiss/Mr.Children 作詞:桜井和寿
ここ、僕のなかでものすごく共感ポイントです。あなたは同じ気持ちを経験したことありますか?
彼女のことは忘れて、自分も新しい明日を生きてみよう。そんなふうに考えてみるのですが、その度に、逆に彼女への気持ちの大きさを感じてしまうんです。まさしくまとわりつくような痛みなんですよね。
また、「全て」ではなく「総て」という漢字を使っていることが、“彼女のこと全部まるごと”という意味を伝えてきます。
ある日君が眠りに就く時
誰かの腕に抱かれてる時
生乾きだった胸の瘡蓋がはがれ
桃色のケロイドに変わればいい
<出典>渇いたkiss/Mr.Children 作詞:桜井和寿
ここで初めて、彼女が心変わりした男が登場します。どうせその男の腕に抱かれることになるんだろう。主人公はわかっています。そして、きっとそうなんだと思います。
ケロイドというのは、傷が原因でぐじゅぐじゅとした赤い腫れのようなものができることです。これが目立つし、なかなか治らないのです。
主人公と別れたことが胸に引っかかってできた傷が、かさぶたになり、さらにそれがはがれてケロイドになることで、ずっと彼女が自分のことをなかなか忘れられないようになればいい。
そして、彼女の体を見ることに新しい男も、そのケロイドが目に入ることでしょう…。
繰り返すようですが、陰湿だけど共感できる主人公の思考です。それだけ愛情を傾けていた女性だったのですね。
学びの一言
フラれた側は、相手に自分と別れた傷がどこかに残ればいいと考えてしまう。でもそれはいやらしいことではなく、愛情の大きさの表れである。
未練がましいようで格好のいいことではありませんが、これがリアルな人間の感情なのだと思います。正直、自分と別れて幸せになられるのなんて面白くないですもんね。
僕なんて、今でも僕と結婚した方が幸せだっただろうなって思っているに違いないと思っていたりしますからね。…これはさすがに陰湿で勘違いか。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
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