Mr.Children「Starting Over」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
自分のなかに宿った大きなモンスター。こいつのせいで主人公は自分の望む自分になれず、このモンスターを倒すことを考えています。
歌詞にもありますが、このモンスターというのは、自分の心、そしてその心によって生まれる選択肢のことです。虚栄心や恐怖心、そして自尊心etc…人間はいろんな心を持つようにできています。これらの心は自分を防衛するために生まれてくる感情です。
生きていくうえでは必要な心の働きですが、そこから生まれる選択肢を選び続けると、積極的に行動するという選択肢を選べなくなり、身動きが取れなくなります。この歌詞の主人公は、そんな自分がもどかしくてしょうがないのです。
そして、主人公は、例えこのモンスターを倒して新たな世界に飛び出すことができても、いずれまた別のモンスターが現れてそいつと対峙していくことになることを理解しています。結構大人ですよね。
そんな繰り返しのなかで少しずつ先に進んで行く。始まりと終わりの連続。そのことに対する希望と不安。自分の望む人生を生きていくというのはこれらをすべて経験していくということだということを示してくれる歌詞だと感じます。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
肥大したモンスターの頭を
隠し持った散弾銃で仕留める
今度こそ 躊躇などせずに
その引き金を引きたい
<出典>Starting Over/Mr.Children 作詞:桜井和寿
歌い出しの歌詞です。出だしからなんてインパクトのある歌詞なんだ。と最初に聞いたときに感じました。
上の全体解釈で書いたとおり、ここで言うモンスターとは、自分の中に生まれてくる様々な心と、そこから導き出される選択肢のこと。
このモンスターを散弾銃で仕留めて、そいつに捕らわれている自分を救い出したい。
しかし、そう思う心と相反して、本当に引き金を引いてその選択肢をなくしてしまってもいいのか、躊躇する心もあるようです。
例えば、現状維持を選んだ方がいいんじゃないか?と訴えてくる感情。こいつを仕留めない限り、新たな世界に飛び出すチャレンジには踏み切れません。でも「失敗したらどうしよう。もとの場所にいればよかった」と考えてしまう不安はつきまといます。
これが、今主人公が置かれている状況です。これまではその不安に負け、現状維持の選択肢を捨て切れなかったのです。ですが、今回こそはもう仕留めてしまいたい!そんな心境にいることがわかります。
僕だけが行ける世界で銃声が轟く
眩い 儚い 閃光が駆けていった
「何かが終わり また何かが始まるんだ」
そう きっとその光は僕にそう叫んでる
<出典>Starting Over/Mr.Children 作詞:桜井和寿
サビの歌詞です。ここで主人公はついにモンスターの頭に狙いを定めて引き金を引いたようです。
銃声が轟き、銃弾の閃光が一瞬で駆けていきます。
ですが、僕のイメージではこの場面はスローモーション再生なんですよね。
その銃弾はモンスターを仕留めることになるでしょう。しかし、「何かが終わり、また何かが始まるぞ」。眩しく光る銃弾は主人公にこう訴えてきます。
このモンスター(選択肢)を仕留めたら、もうその選択肢を選ぶことはできなくなる。放たれた銃弾は戻らない。引き金を引かなかったことにはもうできない。
そんなふうに主人公が自分に言い聞かせていることがわかります。
追いつめたモンスターの目の奥に
孤独と純粋さを見付ける
捨てられた子猫みたいに
身体を丸め怯えてる
あぁ このままロープで繋いで
飼い慣らしてくことが出来たなら
<出典>Starting Over/Mr.Children 作詞:桜井和寿
ここから2番の歌詞です。2番の歌詞で出てくるこのモンスターとは、1番のときのモンスターとは別のモンスターだと捉えてもいいと思います。
さて、この新たなモンスターをまた仕留めようと追いつめた主人公。しかし、いざ仕留めようとするとそのモンスターが哀れに見えてしまいます。
仕留めるのをやめようか。そんな気持ちも芽生えますが、ここで仕留めないで置くとまた暴れ出します。子猫のようにかわいく大人しくしていてくれれば、仕留めるという選択をしなくて済むのに…。
何かを選択するというのはしんどいですもんね。この歌詞でも、主人公が葛藤していることがわかります。
いくつもの選択肢と可能性に囲まれ
探してた 望んでた ものがぼやけていく
「何かが生まれ また何かが死んでいくんだ」
<出典>Starting Over/Mr.Children 作詞:桜井和寿
そうなんですよね。人生にはいろんな選択肢があり過ぎます。
たくさんの選択肢があり、どれもが選べるという状況は一見豊かなようですが、とにかく迷うんですよね。そのうち本当に自分がしたいと望んでいたものがどこにあったか見失いそうになる…。
そんな感覚は個人的によくわかります。
ある選択肢を選ぶたび、新しい道が生まれますが、他の選択肢は死んでいきます。そしてその選択の場面はこの先も次々と終わりなく繰り返され、続いて行くのです。
「何かが終わり また何かが始まるんだ」
こうしてずっと この世界は廻ってる
「何かが終わり また何かが始まるんだ」
きっと きっと
<出典>Starting Over/Mr.Children 作詞:桜井和寿
最後の歌詞です。
ここでは、そんな選択の連続が、世界中のいろんな場面、すべての人のもとで起こっているんだということを示しています。
世界中の大小さまざまな選択の連続で、この世界は動いている。これは間違いなく真理ですよね。
選択に迷い、不安を抱え、散弾銃を握りしめているのは自分だけではない。だからしんどくてもこの選択の連続の人生を生きていかなくてはならないという覚悟を感じる歌詞です。
学びの一言
人生は選択の連続。選択に迷うとモンスターがしつこく迫ってきて、本当に進みたい道を選ぶのを邪魔してくる。そのモンスターを仕留めるための引き金を引くことも引かないことも、また選択。
全体的にちょっとややこしい文章になってしまった気がします…。しかし、僕のこの曲の歌詞の解釈を一言でいうとこういうことです。(一言になっていませんが)
僕もこの歌詞の主人公同様、選択には悩んで時間がかかってしまうタイプです。スパッ、スパッと判断が早い人のことをうらやましくなることもあります。
しかし、悩んで自分のなかに現れるモンスターと真正面から対峙して、そいつを仕留めることにするかどうか、考える時間を持つというのも必要な経験ではないでしょうか。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
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