Mr.Children「ランニングハイ」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
らんにんぐはい
「ランニングハイ」とは、ご存知の通り走っているときに気持ちが高揚して疲れや苦しさを感じなくなった状態のこと。
歌詞を追うと、一貫して「ザ・自分との対話」という内容です。歌い出しの歌詞では自分の内面が甲と乙に分かれて言い合いをしています。
そんな延々と続く自分との対話(=人生)をランニングに喩え、走っている間にどんどん自分との対話も加速していく様子が描かれています。そして最後には「今の自分の想いを持って生きて行きゃいいんだ!」というテンションに至る。
主人公の内面の対話をなぞりながら、最後には悩みながら生きて行くことを肯定してくれる応援ソングです。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
甲「理論武装で攻め勝ったと思うな バカタレ!」
乙「分かってる 仕方ないだろう他に打つ手立て無くて」
甲「威勢がいいわりにちっとも前に進めてないぜっ」
乙「黙ってろ! この荷物の重さ 知らないくせして」
<出典>ランニングハイ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
かなり個性的な歌い出しの歌詞ですよね。“甲・乙”なんて、歌詞で聞いたことありません。
自分の内面とドッヂボールをするように言い合いをしています。つまり、“葛藤”の状態にあるワケですね。
甲の自分は理想を語り目指すのに対して、乙の自分は現実の自分を正当化しています。
これ、甲の方が高尚で偉い気がしますが、乙の正当化というか今の自分を認めてあげる気持ちもかなり大事だと僕としては思います。
しかし、この主人公としては「自分はまだまだやるべきことをやれてなくて、このままじゃダメだ」と思い悩んでいることがわかります。
「もう疲れた誰か助けてよ!」そんな合図出したって
誰も観ていない ましてタイムを告げる笛は鳴らねぇ
なら 息絶えるまで駆けてみよう 恥をまき散らして
胸に纏う玉虫色の衣装をはためかせていこう
<出典>ランニングハイ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
このサビの歌詞の表現もものすごいパワーを感じますよね。
別に誰にも注目されてないから、弱音を吐いても誰も気づかない。ましてや時間が止まって少し待ってくれるなんてファンタジーも起きない。そう、それが人生ですよね。
しかし、主人公の偉いところもこのフレーズに書かれています。
「どうせ誰も観てないし時間が止まるわけでもないなら、息が続くまで走ってやろうじゃないか」という気持ちまで振り切って考えられるところです。
「玉虫色」とは、光の加減によって様々な色を見せる玉虫の体の色のこと。この歌詞では、「心の持ちようは自分の気持ち次第で何とでも解釈できる」ということことを表現するのに使われています。
前倣え 右へ倣えの欲望 気付けば要らんもんばかり
まだ間に合うかなクーリングオフ
<出典>ランニングハイ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
この歌詞は、つい周りに流されてしまうことについて書かれています。
「あれが欲しい」「これがお得だ」「そんなバカなことしてるのか?」生きていると、世間や身の回りからこんな声が嫌でも聞こえてきたり、目に入ったりします。
知らずに自分も周りに流されて、気づけば望んでもいない生き方をしている。これもすごく良くわかります。日本人は特に周りの目を気にするし、平均が大好きですもんね。
でも、本心ではもっと違う生き方がしたい望んでいるならば、その気持ちを大事にしないと一度切の人生はすぐに終わってしまうでしょう。
時代とか 社会とか 無理にでも敵に仕立てないと
見方を探せない 愉快に暮らせないよ
<出典>ランニングハイ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
これは今の時代ではさらに顕著になっているのではないでしょうか。
今の政治家はナンセンスだとTwitterで書き散らかす。悪いことをした芸能人をTwitterで叩く。…なんかTwitterばかりになりましたが、伝わりますよね?
ネットが発展した社会では、何かをターゲットにすることですぐに不特定多数の味方が見つかります。それで「自分は世間から外れてない」と安心しているのです。
一方で、そうしないと自分を保てなかったり、居場所が見つけられないという点を見落としてはいけません。この短いフレーズはそんな警鐘を鳴らしてくれているように思います。
退きどきだと言うなかれ素人! まだ走れるんだ
息絶えるまで駆けてみよう 恥をまき散らして
胸に纏う玉虫色の衣装を見せびらかしていこう
<出典>ランニングハイ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
クライマックス、最後の歌詞です。
歌詞も桜井さんの歌い方も勢いが最高潮に達するポイントですよね。
退きどきは自分で決めるものです。ならば、今退かなくてもいいじゃないか。「素人!」と吹っかけてくるこの感じは冒頭の“甲”の自分でしょうね。
玉虫色の衣装とは、先にも書いた心の持ちようと、自分らしい生き方のことも指している言葉に思えます。
「自分らしい生き方を世間に見せびらかしていこう!」最後はそんな爽快な心意気を僕たちに分け与えてくれます。
学びの一言
葛藤を感じるようなら、自分の望む生き方を本気で突き詰めてみよう。
「本気で」というのがポイントだと思います。葛藤するということは、自分が本当に望む生き方をあきらめ切れていないということ。
ここで本気ではなく、何となくで現状維持を選んでしまうと、きっと後悔します。本気で悩んだ末に出た答えが現状維持なら、その選択は正しいと自分で思えるはずです。
悩むなら本気で悩まないと、いつまでも結論が出ないし、その答えに自信が持てません。
本気で考えて答えが出たならば、その生き方を自信満々に見せびらかしていけばいい。
さて、僕も出した答えに自信を持たなきゃな。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
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