Mr.Children「くるみ」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
「今からやって来る未来」のことをテーマにして書いたと桜井さんが話している曲です。
「ねぇ くるみ」と話しかけるフレーズが印象的ですが、この「くるみ」を「やって来る未来」と捉えると少し歌詞がかみ合わないような感じがします。
なので、僕としては、「未来を見据えつつ、過去のことを振り返るのに使っている言葉」というニュアンスで解釈しています。
ちょっと長いんですけどね(笑) 「過去のことを気にしつつも、意識は未来を見ている」とでも言うような、そんな感覚がなんとなく伝わってくる言葉です。
そして歌詞全体からも、過去への想いと未来への不安と希望が描かれていることが伝わってきます。
1人の人間のなかで、過去と未来の関係は単純なようで実は複雑です。そんなことをそっと教えてくれる歌詞だと感じます。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
ねぇ くるみ
この街の景色は君の目にどう映るの?
今の僕はどう見えるの?
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
歌い出しのこの部分。「くるみ」というのは、人物のように見立ててはいますが、これは自分への問いかけです。
日々の生活を歩むなかで、ふと「今の自分でいいのだろうか」「このまま進めばいいのだろうか」という思いが起こったのでしょう。
自分の過去を振り返りつつ、今の自分はどんなもんなんだろうと立ち止まって考えている状態なのだと思います。
良かったことだけ思い出して やけに年老いた気持ちになる
とはいえ暮らしの中で 今 動き出そうとしている
歯車のひとつにならなくてはなぁ
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
1番のサビの歌詞です。
これ、わかります。過去の良かったことを思い出していると、だいぶ老け込んだような気分になります。なんだか遠くまで来てしまったような、そんな気持ち…。
しかし、立ち止まって過去のことばかり考えてもいられず、常に動いて変化している世の中で自分にできることをしないといけないなぁ。と現実に引き戻されている感もあります。
この感覚もよくわかりますね。人の心の動きを繊細に切り出して表現したフレーズです。
希望の数だけ失望は増える それでも明日に胸は震える
「どんな事が起こるんだろう?」
想像してみるんだよ
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
このフレーズは名言ですね。
希望を持っただけ、叶わない希望も増えます。むしろ、叶わない希望の方が多いのが人生です。
その度に失望することにもなるけど、それでも人は明日という希望を見る。
その明日にはどんな事が起こるか、それを想像しながら生きているんですよね。
ねぇ くるみ
時間が何もかも洗い連れ去ってくれれば
生きる事は実に容易い
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
激しく同意です。
過去の辛い記憶、消してしまいたいほどみっとない過去、それをきれいさっぱり忘れてしまえるなら、かなり気楽に生きて行けるでしょう。
でも反面、そんな過去が今の自分を作っていたり、エネルギー源になっていたりもするんですよね。
過去がきれいさっぱり消えないことには、なんらかの意味があるのでしょう。それを生かすか殺すか、それは僕たち一人ひとりの選択にゆだねられています。
どこかで掛け違えてきて 気が付けば一つ余ったボタン
同じようにして誰かが 持て余したボタンホールに
出会う事で意味が出来たならいい
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
このフレーズも名言ですよね。この曲は名言だらけです。
こんな考え方できる人、桜井さんくらいなもんです。
失敗してしまってちぐはぐなまま進んできた経験も、誰かのちぐはぐとピッタリはまり、何かの意味を成すかもしれない。
そんな可能性は低いように感じるかもしれませんが、普通に世の中に溢れていることです。
例えば悲しい失恋。フラれてしまった方は絶望にも似た思いを経験しますが、その失恋があったからこそ今の恋人と出会えた。なんてケースはたくさんありますよね。
新しい恋人の方も、出会ったときに別に恋人がいたら2人は恋人にはならなかったワケで。2人ともの過去や経験が現在の関係を作り、新しい意味を成しているんですよね。
今以上をいつも欲しがるくせに 変わらない愛を求め歌う
そうして歯車は回る この必要以上の負担に
ギシギシ鈍い音を立てながら
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
「歯車」という単語がまたでてきました。これは「世の中」のことを指しています。
世の中に生きる人々はとても複雑でときには矛盾した願いを持って生きている。それが世の中に架かっている「必要以上の負担」です。
もうこの構図は変わることのないことでしょう。そんな歯車の一部に、僕たち一人ひとりは組み込まれているのです。
じゃあもう、自分の想いのとおりに生きて行けばいいじゃないか。僕はそんなふうに思います。
自分だけ優等生ぶっても取り繕っても、世の中はどうせギシギシするのですから。
引き返しちゃいけないよね
進もう 君のいない道の上へ
<出典>くるみ/Mr.Children 作詞:桜井和寿
これは「過去」のことを指している歌詞です。
過去に引き返すことはできないし、できたとしてもそのときはそのときで悩むし、失敗もするはずです。
忘れられない過去は抱えたまま、未来へ向かって歩いて行くことが僕たちにできることです。
学びの一言
変わらない過去よりも、これからどんな気持ちで、どんな希望を持って生きるか。これが大事。
というよりも、気持ちや希望、意識をどう持つかしか、僕たちにはコントロールできないと言った方が正確かもしれません。
過去は大事なものです。それが未来への羅針盤になります。
しかし、希望や意識ももっと大事です。それは未来への地図になります。地図を描くことそのもの、とも言えるかもしれません。
たぶん、あてもなく歩くのは不安過ぎて、人間にはできないようになっているのです。だから悩むし、不安になる…。
でもそれこそが、生きているということなのかもしれません。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
▼「くるみ」を含むアルバム
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