Mr.Children「ハル」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
詩的な表現がとても美しい歌詞。
迷いや行き詰まりを感じていた主人公を、春の風がなぐさめるように優しく撫でて行った。そんな場面と、主人公の心境を切り取った詩になっています。
どこか物憂げで、それでいて夜明けを感じさせるようなメロディーと桜井さんの歌声が印象的です。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
UFOに似た星 物憂げな夜を流れていった
またひとつ またひとつ しばらく時間が止まった
<出典>ハル/Mr.Children 作詞:桜井和寿
場面は夜からはじまります。
UFOに似た星とは、流れ星のことと考えればいいでしょう。流れ星を見かけたということは、空を眺めていたということだと思います。注意していないとまず見つかりませんからね。
何か心が晴れない思いがあって、主人公は夜空を見てたそがれていたのです。
そして流れ星を見つけて、まるで時間が止まったように感じます。
カーテンが揺れてる
背負い込んだものが少し宙に浮かんだ
誰のために生きているのかなんて考える気もしなくなる
思い惑う胸をくすぐるように風が流れていく
<出典>ハル/Mr.Children 作詞:桜井和寿
ここから、主人公は部屋の中、または部屋についたベランダにでもいるのかなと推測されます。でも、次の歌詞で、僕は確実にベランダにいるなと確信しています。
カーテンが揺れたという表現で、風が優しく吹いたということが読み取れます。
静かな夜の空と流れ星、そして優しい風。季節も春であることが後の歌詞からわかります。そんな穏やかな情景の中にいると、難しいことを考えている自分が小さな存在に感じるものです。
主人公の迷いの気持ちを、勇気づけるでもなく、否定するでもなく、ただくすぐるように風は吹いていきます。
信号機は誰もいない道にも合図をくれる
愛想などない でも律儀で
誰かに似てる気がした
<出典>ハル/Mr.Children 作詞:桜井和寿
主人公の目には信号機が見えています。これが、先ほど僕が「主人公は部屋のベランダにいると確信している」と言った根拠です。
主人公の視界には信号機が映っているのですから、部屋の中ではないです。カーテンが揺れてるのに気づき、信号機も見える場所となればベランダになってきます。
「誰かに似てる」の“誰か”とは完全に自分のことです。愛想なしで取り柄なども少ない自分のことを否定していた主人公ですが、人通りもないのに律儀にがんばっている信号機に自分を重ねて、自分のことを肯定する気持ちに変化してきたのです。
春の風に
世界は素晴らしいなって少し思えた
それを知らせるサインだったんじゃないかって考えたりもしてる
行き詰ってた日々に束の間のご褒美をくれる
<出典>ハル/Mr.Children 作詞:桜井和寿
ベランダで優しい春の風を味わい、主人公は癒されていきます。
世界は素晴らしいものだと思う気持ちになり、また明日からも前向きにやっていこうという気持ちになったはずです。
そんな気持ちを与えてくれたことをご褒美と解釈しているところからも、主人公の心が救われて行っていることが伝わってきます。
春の風に
世界は素晴らしいなって少し思えた
旅路の果てに何があるのかなんて
もうどうなったっていい
優しく頬を撫でるように風が流れていく
緩やかに解かれていく
<出典>ハル/Mr.Children 作詞:桜井和寿
最後の歌詞です。主人公の気持ちはかなり前向きになってきています。
人生という旅路の果てに何があるのか。そんなことはとりあえずどうでもいいという気持ちになっています。
これまでは将来への不安も抱えて日々を過ごしていたのでしょうが、一人静かに春の風を浴びてたそがれるなかで、「先のことなんて考えてもしょうがないか」という気持ちになったのでしょう。
そうして不安や迷いの気持ちが小さくなったことを「頬を撫でる」「解かれていく」という言葉が表しています。
学びの一言
たそがれる時間は自分との対話の時間。過ごしやすい時期のベランダがオススメ。
一人でたそがれる時間って、僕は大事だと思います。まさしくこの歌詞の主人公のように「とにかく前に進んでいこうか」という気持ちになります。
自分との対話の時間を持つことというのは、なかなか効果があります。僕自身も学生のときなどかなりよくやっていました。ただ、意識してというよりは気づいたらそうしているという感じでしたが。
オススメなのは見晴らしや景色のいい場所です。外の景色が“世の中全体”のように見えて、しかもそれがだんだん優しく見えてくるんですよね。
詩的な歌詞がピッタリとはまる、静かに前向きな気持ちにしてくれる歌詞だと感じています。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
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