Mr.Children「十二月のセントラルパークブルース」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。
歌詞全体の解釈
まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。
セントラルパークにダコタハウス・・・この歌詞の主人公はアメリカはニューヨークのマンハッタンに生活しているようです。マンハッタンはニューヨークの中心街。
どうやら彼は、仕事の都合でアメリカの大都会に1人やってきているようです。
歌詞全体からは、遠く離れてしまった“君”への憧れの心と、その恋がまったくもって叶いそうもないという嘆きがブレンドされて伝わって来ます。
“君”がいなくて凍りそうなほど寒い…。ちなみにニューヨークの冬は気温こそ東京と大差ないとは言え、とても空気が乾燥していて刺すような痛みを感じる寒さだそう。
マンハッタンに来させられるくらいなので、主人公は仕事ができる男なのでしょう。しかし、外の寒さと相まって、どこか寒々しい、痛々しい状況と心境にあるようです。
歌詞の深読み
ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。
ダコタハウスの前の道で恋人達とすれ違う
僕はコートの襟をたてて あぁ 君に抱きしめて欲しい
<出典>十二月のセントラルパークブルース/Mr.Children 作詞:桜井和寿
ダコタハウスは、マンハッタンにある高級集合住宅です。
ニューヨーク、マンハッタンの街のど真ん中に主人公の生活圏があることがわかります。
その街中では、カップルも多く見られ、その仲睦まじい様子を見ると「“君”とあんなふうになれたらなぁ」という願望が湧き上がってきます。
コートの襟をたてる、抱きしめて欲しい、という言葉から、寒さを感じますね。
心の中のアルコールランプを灯すためのヴィンテージワイン
グラスに注いで独り寂しくチヤーズ
十二月のセントラルパークブルース
<出典>十二月のセントラルパークブルース/Mr.Children 作詞:桜井和寿
どこかのバーに入り、寒さをと寂しさを凌ぐためにワインを煽る主人公。
ただのワインでなくヴィンテージワインです。ヴィンテージワインは、ブドウの出来が良かった当たり年に作られたワイン。高級品です。そんなワインをオーダーする主人公は、やはり仕事ができる男で、お金もある程度持っているのでしょう。
いっそ凍りそうさ こりゃ何の修行だ? 十二月
君無しなど論外 もうどうしたらいいんだ? 雪だ
<出典>十二月のセントラルパークブルース/Mr.Children 作詞:桜井和寿
「修行」とまで表現してしまうほど、ニューヨークの12月は寒いようです。
しかも、主人公が恋する“君”はいない。彼女は日本にいるのですから、物理的にも遠く離れています。偶然会うという奇跡すら起きません。
そうこうしているうちに雪まで降ってきました。刺すような痛みの寒さに、空からは雪。想像するだけで嫌ですね。まさに修行のような環境です。
宗教かぶれが僕にこう問う 「Hey あなたは幸せですか?」
「幸せですとも」と嘘ぶきながら
十二月のセントラルパークブルース
<出典>十二月のセントラルパークブルース/Mr.Children 作詞:桜井和寿
この部分の歌詞が大好きです。
アメリカの人通りの多い街中、主人公のやぶれかぶれな胸中、そんなこの歌詞に描かれている情景が全部伝わってきます。
何より、歌詞の話ではないですが、桜井さんの歌い方がツボです。
いっそ帰ろーか?日帰りじゃどうだい? 十二月
人恋しの海外 もどかしくて変だ 好きだ
<出典>十二月のセントラルパークブルース/Mr.Children 作詞:桜井和寿
寂しすぎて、もういっそ日本に帰ってしまいたい。もう日帰りでもいいから!主人公の衝動が爆発寸前です。
もどかしくて変になりそうで、「好きだ!」なんて心の中で叫んでいます。
ニューヨークに来たもののまだ住み慣れないのでしょう。たくさんの人がいても、もはや彼にとってそれはただの景色になってしまっていて、ただただ人恋しいのです。
街をうめ尽くすクリスマスツリーを見てたら涙が出て来た
ちょっと待て僕はもう三十だぜ
十二月のセントラルパークブルース
<出典>十二月のセントラルパークブルース/Mr.Children 作詞:桜井和寿
海外、大都会、12月、クリスマス、街中のクリスマスツリー。
とてもステキな光景しか浮かんできません。しかし、そんな“幸せ”を象徴するような雰囲気に囲まれていても、心の中が寂しさでいっぱいでは、ステキな光景はむしろ暴力になります。
「こんなステキな街で彼女と過ごせたらなぁ」って、絶対に想像しちゃいますからね。これはつらいです。ダメージを受けるのもとてもとてもわかります。
そしてふと自分の年齢を思って焦ります。「もう三十」ということは現在29歳ですかね。仕事は順風満帆でも、本人の望んでいた状況とはほど遠いようです。
学びの一言
仕事ができるエリートなだけでは、幸せになれるとはまったく限らない。望むものは自らつかみに行く気骨を持たなくてはならない。
この歌詞の主人公は、これまでも書いて来たとおり、仕事ができる男です。しかし、できるからこそ会社の辞令で海外に転勤となります。まさしく栄転なのでしょうが、主人公の希望に沿っていたかというと「No!」でしょうね。
“君”といっしょに過ごすことができることこそ、主人公の望みだったのではないでしょうか。
ならば、それを実現するために、希望は口に出して行動しなくてはいけなかったですね。
海外転勤は断る。“君”に自分の想いを伝える。出世街道からは外れるかもしれませんが、幸せ度は間違いなくこの方が高かったでしょう。もちろん、彼女とうまく結ばれるかは未知数ですが。
それでも、自分からつかみにいかないと周囲に流されるばかりです。主人公の嘆きのブルースを聞いて我が振りを直しましょう。
▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。
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