「ファスナー」の歌詞から学ぶ

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「ファスナー」の歌詞から学ぶ歌詞解釈

Mr.Children「ファスナー」の歌詞の意味と解釈を書いて行きます。

歌詞全体の解釈

まずはこの曲の歌詞全体の解釈から。

歌詞全文はこちらを参照(J-Lyric.net様)

 

着ぐるみの背中についたファスナー。この歌詞では、外見とは異なる中身の姿を隠すものを表すメタファー(隠喩)として描かれています。

それがどんな人にも、どんな物事にもある。そんなことに気づかせてくれる歌詞です。

しかしこの歌詞からは、もっと大きなことを学ぶことができます。それは、この“ファスナー”という存在をどう捉えるべきかということです。

以下の深読みをしながら掘り下げていこうと思います。

歌詞の深読み

ここからは歌詞を抜粋し、独自解釈の深読みをしていきます。

 

昨日 君が自分から下ろしたスカートのファスナー
およそ期待した通りのあれが僕を締めつけた
<出典>ファスナー/Mr.Children 作詞:桜井和寿

歌い出しの歌詞です。何とも絶妙な言い回しですね。

とにかくこの歌詞から、主人公の”僕”は、想いを寄せていた“君”と初めて結ばれたことがわかります。

ただ、スカートのファスナーは自分から下ろす、そして主人公が予感していた通りの“あれ”…。つまり、彼女はこういう経験(平たく言えば男性経験)がなかなかに豊富なんだなぁと主人公は感じたということです。

でも、主人公も予感していたワケなので、最初から薄々感づいていたということもわかります。

 

きっと ウルトラマンのそれのように
君の背中にもファスナーが付いていて
僕の手の届かない闇の中で
違う顔を誰かに見せているんだろう
そんなの知っている
<出典>ファスナー/Mr.Children 作詞:桜井和寿

普段は清楚で純真でウブな雰囲気を醸し出している彼女ですが、それはファスナーのついた着ぐるみをかぶった姿だったんだと、主人公は悟りました。初めて結ばれたことで、その着ぐるみの中の彼女の姿がチラリと見えたワケですね。

主人公の知らないところで、彼女はその清楚な着ぐるみのファスナーを開けて脱ぎ捨て、彼女の真の姿をいろんな男性に見せている。そのことは主人公も「知っている」と言っています。

最初からそんな予感はあったのでしょう。しかし、実際にそれが確認できてしまったような気がして失望しているのです。

 

もしも ウルトラマンのそれのように
総ての事にはファスナーが付いていて
僕が背中見せているその隙に
牙を剥くつもりでも 信じてみる値打ちは
あると思えるんだ
<出典>ファスナー/Mr.Children 作詞:桜井和寿

彼女の例を見て、主人公はこの世のすべての物事にファスナーが付いているんじゃないかという考えに至ります。

見た目とは異なる真の姿、本性。そんなものをファスナーの中に隠していて、見た目に騙された僕のことを傷つけたり、裏切ったりする。世の中ってそういうものなのかもしれないと、むしろもう割り切って考えてしまおうという心境なのです。

しかし、この主人公の偉いところがここで、そんな外見と中身が違うものだらけの世の中でも、信じてみる値打ちはあると思っているんですよね。

なぜそんな殊勝なことが思えるのか。

今でこそファスナーの中身を知ってしまったけれど、彼女を好きでいた時間に価値を見出しているからか…。はたまた、すべての物事のファスナーの中身を最初から疑ってかかると疲れてしまうからか…。

はっきりとは読み取れませんが、僕は前者の気持ちが強いのかなと勝手に解釈しています。自分の気持ちが動き、それによって行動したことはやっぱり価値のあることだと思うんです。

きっと 仮面ライダーのそれのように
僕の背中にもファスナーが付いていて
何処か心の奥の暗い場所で
目を腫らして大声で泣きじゃくってるのかも
<出典>ファスナー/Mr.Children 作詞:桜井和寿

この歌詞、思わず主人公のことをかわいそうに思ってしまいます。

なぜなら、主人公は本心では悲しくて大泣きしているからです。

外見では「世の中のすべてにはファスナーがついてる。だけどそれを信じて生きてみるよ」と思っているように見せていても、自分のファスナーの中(本心)では「彼女に裏切られて悲しいよ」と泣きじゃくっているというのです。

 

きっと ウルトラマンのそれのように
君の背中にはファスナーが付いていて
僕にそれを剥がし取る術はなくても
記憶の中焼き付けて
そっと胸のファスナーに閉じ込めるんだ
<出典>ファスナー/Mr.Children 作詞:桜井和寿

この部分の考え方がとても好きです。そしてかっこいいと思います。

“君”についているファスナーと、その中に隠された本当の姿。その存在を僕が勝手に否定したり非難することはお門違いだし、力ずくで剥がし取ってしまうこともできない。

ファスナーがついていることも含めて“君”なのだから、ファスナーがついたままの“君”を受け入れよう。そんな心境にたどり着いたのです。

ただし、今となっては“君”とは終わってしまった関係なので、受け入れるのはあくまで“記憶の中”になります。

 

惜しみない敬意と愛を込めてファスナーを…
<出典>ファスナー/Mr.Children 作詞:桜井和寿

ファスナーは、その人の「ここは隠しておきたい」という気持ちを象徴するものです。欠点だったり、恥ずかしい過去だったり、ツラい過去だったり、あるいはふしだらな欲だったり。

でも、そういう世間からは隠しておきたい部分や、「隠しておきたい」と思う心そのものこそが、その人の人間らしさでもあるのです。

だからこそ、その人のファスナーには敬意と愛を表し、受け入れていきたいという考え方で歌詞は終わっています。

 

学びの一言

相手のファスナーの存在ごと受け入れる大きなファスナーを心に持とう。

中身の真の姿を別の姿で包み隠してしまうファスナーですが、そのファスナーの存在と、真の姿を隠そうとする気持ちまでも丸ごと受け入れる。そして丸ごと愛する。そんな懐の広い人間になれたら…と考えされられます。

だって、僕自身にもファスナーがあって、そこにしまっているものはありますから。近しい人だからこそ見せられない部分というのが、正直あります。なんでもかんでもすべての人にさらけ出したら、世の中は回っていきません。

だから中身が気になってもこじ開けるのはNGで、「あ、この部分がこの人のファスナーなんだな」と思って分かっているだけでいいのです。ファスナーがあってこそのその人なのです。

 

▼「重力と呼吸」までの“全曲”詩集。冒頭の桜井さんの作詞に対する熱い想いが超貴重です。

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